2008年07月04日
クマの絶滅と大人の責任
日本熊森協会の森山まり子会長の講演会に行ってきました。
この協会は、クマが棲めるような自然豊かな奥山を守るために活動している自然保護団体です。
講演は、尼崎市の中学生たちが、兵庫県のツキノワグマを絶滅から救おうと社会に働きかけ、国を動かした実話でした。人間が山をスギやヒノキばかりで生きものの棲めない森に変えてしまったことで、食べる物がなくなって里におりてくるクマが、有害獣として殺されている――そんな新聞記事を中学校の理科教師だった森山さんが授業で紹介したことから、武庫東中学校の生徒たちが立ち上がります。校内に16の熊を守る会が設立され、自然保護のために猛勉強と活動が行われました。
なんとしてでも人間が壊した自然を元通りにして動物たちに返してやりたい。素直でまっすぐな子どもたちの行動を、聞いているうちに涙が出てきました。
あまりに一所懸命な様子に「なんで君ら、そこまでするんや?」と森山さんが生徒たちに尋ねたところ、こんな答えが返ってきたそうです。「先生、これはクマだけの問題と違う。ぼくらの問題でもあるんや。ぼくら寿命まであと70年ぐらい生きなあかんねん。でも、今の自然破壊見てたら、寿命まで生き残られへんってはっきりわかるねん。ぼくら寿命まで生き残りたいねん」
「先生、大人って、ほんまはぼくら子どもに愛情なんかないんと違うかな。自然も資源もみんな、自分たちの代で使い果たして、ぼくらに何も置いとこうとしてくれへんな」
どうでしょう。あなたは大人として、これに堂々と「そんなことはない」と返事をすることができるでしょうか。
九州のクマは、すでに絶滅してしまったそうです。四国のクマも、もう絶滅を待っているだけの状態です。滋賀のクマはどういう状況か、知っていますか?
クマが棲めない森は、死んだ森です。保水力もなく、わき水や川の水が枯れ、生きものに必要な栄養分が里にも海にも届かなくなるので、ありとあらゆるものの生命力が失われていくと言います。田んぼに張る水もなく、上水道に必要な水もなくなってしまうので、渇水が起こります。
私たちが子どもに残したいのは、そんな森なのでしょうか。それとも、クマが棲める森でしょうか。そのために、私たちは具体的に何をしているのでしょうか。
「かわいそうね」と人ごとにせずに、私には何ができるのだろう。そう深く考えさせられた講演でした。
※森山まり子さんの講演録「クマともりとひと」と講演CD「クマが棲める豊かな森を次世代へ!」は、滋賀県環境学習支援センターで借りることができます。読みやすい小冊子
なのでぜひご覧ください。
(げんげん)
Posted by 遊人里(ゆとり) at 21:44│Comments(0)
│ゆとりなひとびと
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。